@shishidon _wine

ししどんの
グラニットベルト発酵紀行

Chapter 18

情熱が醸す、地域のハブ『VARIAS』

元祖麹料理研究家・小紺有花さんが主宰する「醸し塾」にて研鑽を積む伝道師。
2026年2月、小紺さんがGRANIZOと共に企画・運営する、オーストラリア・グラニットベルトの「ワインツーリズム」へ同行。
そのツアー初日から、感動で涙が止まらなかったししどん。
その瑞々しい感性で綴られた記録が「グラニットベルト発酵紀行」です。

※「醸し塾 伝道師」とは、元祖麹料理研究家・小紺有花氏が主宰する「醸し塾」の「伝道師養成講座」を修了した、発酵食(特に糀)の本質と魅力を正しく家庭や社会に伝える専門人財です。
単なる料理教室の講師ではなく、食卓力(食事を通して心身を整える力)を高め、人生の幸福度を上げることを目的としています。

今回訪ねたのは、スタンソープにあるアカデミー、『VARIAS』(ヴァリアス)

こちらは元々、Queensland College Of Wine Tourism (QCWT)という名の、ワイン醸造家とシェフを育てるためにSouthern Cross 大学がグラニットベルトに分校として設けていた施設です。

しかし昨年、生徒数の減少により、20億円をかけて造った施設からの撤退と閉校が発表されました。

そこで立ち上がったのは、グラニットベルトの有志たちでした。

グラニットベルト商工会が州政府を説得し、資金援助を取り付けて、産地を表現するためのコミュニティハブとして再発足させたのが、このVARIASなのです。

現在はRidgemill estate のオーナーでもあるミシェルさんが理事長を務め、施設内に併設されたレストランや醸造施設を再利用し、グラニットベルトのフードとワインシーンを丸ごと味わってもらうための施設として、地元住民のみならず、観光客にも絶大な人気を誇っています。

案内して下さったのは、
VARIAS 総支配人の、Michael(マイケル)さんと、
VARIAS オリジナルワイン「BANCA RIDGE 」醸造責任者の、Arantza (アランツァ)さん。

彼らのお話を聞いて強く感じたのは、この場所に対する並々ならぬ『情熱』でした。
一度は静かに幕を閉じようとしていたこの施設を、もっと盛り上げたいと未来を語る彼らのアイデアは、まるで発酵中のワインのように、沸々と湧き出しているようでした。

施設内を歩くと、その広大さに驚かされます。青々と広がる葡萄畑、そして最新の設備が整った研究室。
この研究室は学生の為だけでなく、地域の醸造家、企業にも開かれていて、産地全体の質を底上げする「知の拠点」としての役割も担っているそうです。

そんな見学の途中、ワインボトルが並べられている部屋の壁に、あるものを見つけて足が止まりました。

一枚のタペストリーの中に描かれた、美しい芸者さんの姿と「日本」という文字。

遠く離れたオーストラリアの地で、予期せず出会った母国のシンボル。
なんともいえない懐かしさと温かさに包まれました。
この場所が歩んできた時間の中に、私たちの国もそっと寄り添っているような気がして、とても嬉しい気持ちになったのです。

そして今夜のディナーは併設されたレストランにて。
ここでは、アカデミーで学ぶ生徒や卒業生たちも働いていました。
地元の食材を活かしつつ、中東のスパイス「デュカ」や、アジアのニュアンスを感じる「ナムジムソース」を合わせた一品など、多様な背景を持つ人々が、産地の魅力を丸ごと一皿に込めて、ゲストをもてなしてくれます。
特に、カリカリに焼き上げられたポークとフルーツの組み合わせは、甘味と塩気のバランスが絶妙で、一緒にいただいたロゼワインとのマリアージュが素敵でした。

歴史と情熱が重なり合い、新しい価値が生まれる場所。
グラニットベルトの今と未来が、ここには凝縮されていました。

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