4月に入り、グラニットベルトもすっかり秋めいてきました。

今は最後の赤葡萄の収穫が行われ、これをもって2023年ビンテージワインは全て収穫終了となり、醸造作業へと移行していきます。

白葡萄の後に赤葡萄が収穫されるわけですが、たとえ同じ葡萄品種でも

産地の中での微妙な標高の高さと日照角度によって収穫のタイミングが変わってきます。

スタンソープの街に近いワイナリーではほぼ収穫が終了し、醸造真最中。

RidgemillEstateでは、ネッビオーロ種の収穫後のピジャージュの最中でした。

ピジャージュ作業中のネッビオーロ

近年、ワイン作りも機械化が進んでいますが、ここグラニットベルトではまだまだ人の手で、

自ら葡萄に声をかけながら、愛情込めてピジャージュを行なっています。

このピジャージュ作業は、醗酵中に上から、醗酵槽上部にたまった果帽を突き崩し、液体中に沈める作業で、 果帽を多く液体と触れさせ、色素、タンニン、香り成分等を抽出するのが主な目的なわけですが、

人の手で行うことにより、より葡萄の状態を把握し、細部にまで手が行き届きます。

社長もピジャージュ作業の手伝い

この作業は発酵途中の炭酸ガスで意識を失う危険性もある命を張った作業でもあります。

そして大変な力のいる仕事でもありますが、綺麗に実ってくれた葡萄に感謝し、

美味しいワインに育ってくれるように丹精込めて掻き回す、年に一度の待ちに待った時間でもあります。

主発酵・醸し中のテンプラニーリョ種

Tobin Winesでは、テンプラニーリョ種の主発酵・醸し作業が行われていました。

赤ワインは、ブドウの果汁・果皮・果肉・種子の全て(果醪)を、発酵させます。 この際、アルコール発酵をさせる為に、酵母を加え、糖分が酵母の働きにより、エチルアルコールと二酸化炭素に分解されます。

グラニットベルトの醸造家たちは市販酵母を使用せず、天然酵母にてアルコール発酵を行う醸造家が多数。

ここ、Tobin winesも葡萄由来の天然酵母を使用しているため、 主発酵中は葡萄の様子をこまめに観察する必要があり、この時期は一日中気を張り詰めながらの作業が続きます。

そして微妙な気温や湿度の変化にも敏感に葡萄が変化するため、それに備えた空調管理や湿度管理も徹底的に行われます。

一年に一度、赤ん坊から立派な大人にまで育て上げる子育てのような時間です。

アルコール発酵中の葡萄の試飲・今はまだ甘い葡萄ジュース

一口味見をさせていただきましたが、アルコール発酵前の葡萄は驚くほど甘く、すでに果実のふくよかさとタンニンも感じられ、2023年ビンテージのテンプラニーリョの出来上がりが今からとても楽しみとなりました。

Girraween国立公園の麓に位置するBalancingHeartVineyard

そして最後にBalancingHeartVineyard

ここはギラウイーン国立公園の麓に位置し、グラニットベルト産地の中でも最もニューサウスウエールス州に近い場所にあり、標高が高い故に赤葡萄の収穫が遅く、今は収穫直前。

ベストな収穫のタイミングまで育ち続ける葡萄がたわわに実っていました。

綺麗に垣根仕立(コルドン)にて剪定された中で育つシラーズ種

全ての農作物がそうであるように、葡萄は私たちの力ではどうしようもない天候や自然から多大な影響を受けて育ちます。

雨量、日照りの強弱、突然の雹、動物たちからの被害、気温の高低、全て自然とのバランスがうまくいってこそ、作物が出来上がる、そう考えると奇跡のような収穫に思え、一房も無駄にしたくない気持ちとなります。

こうして自然と、人の手と、全てが調和して出来上がるワイン。

2023年ビンテージワインが出来上がった暁には、全てに感謝の気持ちで、慈しみながら、心して飲んでみたいと、心底思います。

そして醸造家たちの愛する子どもたち(葡萄たち)が無事美味しいワインとなり、

皆様のもとへお届けできる日を今からとても楽しみにしています。

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